タイトル

【第1部】 シンポジウム「危機的大量出血での認定輸血検査技師及び看護師の役割」     
講演1「危機的大量出血での認定輸血検査技師の役割」      
             東北大学病院 輸血・細胞治療部 主任臨床検査技師 成田 香魚子

     大量出血時、輸血検査技師は、限られた時間の中で迅速な血液製剤の準備を求           
    められる。必要な製剤の種類と量、緊急度を的確に把握し、在庫での対応と血液            
    センターへの製剤発注により、どの製剤を何本、いつ準備できるかを調整する。            
    「失血死させない」「ABO型不適合輸血を100%防止する」ことを常に念頭にお            
    き、業務にあたっている。                       
     当院における大量輸血症例を呈示し、また大量出血などによっておこる高度な            
    低フィブリノゲン血症症例に対して2014年8月から供給している院内調製同種ク            
    リオプレシピテートについて、導入と運用、使用状況などを報告する。

講演2「危機的大量出血での学会認定・臨床輸血看護師の役割」      
              秋田赤十字病院 救命救急センター 救急外来看護師 佐藤 めぐみ

     危機的大量出血の現場において、救命につなげる処置として緊急輸血を行うた            
    めに、看護師は採血、血液製剤の準備、投与、副作用の観察と様々な処置を迅速            
    かつ正確に行う必要がある。そのため緊急輸血に関する知識・技術を持ち、医師            
    ・臨床検査技師と協働することが重要となる。臨床輸血看護師としてインシデン            
    トの把握、スタッフの疑問の解決や知識向上を図り、マニュアル整備や情報伝達            
    を行っている。また医師とのカンファレンス、部門間の調整を行いチームとして            
    機能するためのコーディネーターとして活動し、迅速で安全な輸血の実施に努め            
    ている。
        

【第2部】 シンポジウム「止血・凝固の進歩と輸血医療の最前線」 
講演1「輸血療法に必要な凝固・線溶のメカニズムの基礎知識とその応用」      
                日本赤十字社東海北陸ブロック血液センター 所長 松 純樹

     外傷や手術などによる生体にみられる出血の大部分は血管の破綻であり、その
    対応としては破綻した血管の結紮をはじめとする物理的、外科的処置が根本であ
    る。しかしながら、大量の出血を伴う重症外傷や手術症例では本来出血傾向がな
    いにもかかわらず、出血点のわからない出血症状がみられ、このような症例では
    もはや物理的止血では対応は不可能であり、凝固因子の補充としてのFFP、ある            
    いは血小板輸血など止血を目指した輸血療法が必要となる。今回の講演ではこの            
    ような止血を目標とした輸血療法に必要な凝固線溶系のメカニズムについて概説            
    する。

講演2「重症外傷患者に対する止血・輸血治療
              −Damage control resuscitation 」      
     東北大学大学院医学系研究科 外科病態学講座救急医学分野 教授 久志本 成樹

     外傷による48時間以内の死亡原因の50%が大量出血によるものである。大量
    輸血を要する外傷患者の死亡率は50%を超えるが、主要出血源を外科的に制御
    できないことにより失うことより、凝固障害を中心とする生理学的恒常性破綻の
    ため救命しえないことが多い。
     外傷に伴う凝固異常は輸液などにより生じる希釈性障害であるとされてきた。
    しかし、重症外傷では希釈によらない凝固異常を受傷早期より合併し、その死亡
    率は4倍であることが明らかにされた。2000年代になり希釈性障害出現以前より            
    認められる凝固異常が認識され、晶質液過剰投与制限による希釈性凝固障害を防            
    ぐことと凝固因子を早期から補充することを中心とする“damage control            
     resuscitation”が転帰を改善する可能性が示唆された。            
     大量輸血を要する外傷患者は全体の3%に過ぎないものの、外傷センターにお            
    ける輸血の70%がこれらの患者に対するものである。適切な輸血戦略には大量輸            
    血プロトコールが重要であり、事前規定した比率での成分輸血を迅速に行うこと            
    を可能とし、大量出血を伴う患者に対して速やかに組織的対応を実践するもので            
    ある。これにより、死亡率の減少と輸血量と輸血関連合併症、さらにはコストの            
    低減が期待される。血漿や血小板輸血の供給・保存体制、フィブリノゲン製剤や            
    クリオプレシピテート投与を含めた輸血戦略を考える必要がある。

講演3「心臓血管外科の進歩と将来展望」      
        岩手医科大学附属循環器医療センター 心臓血管外科 教授 金  一

     心臓外科治療はこの数十年で目覚ましい進歩を遂げてきました。こうした治療    
    成績の進歩には、外科的手技が広く一般の心臓外科医にも普及した点、そして医    
    療材料(人工弁、人工血管)の進歩、人工心肺装置や心筋保護液など心臓を止め    
    て安定した状態で手術が可能となった点が大きくあります。    
     今回、こうした様々な技術的進歩に支えられて発展してきた心臓血管外科治療            
    と今後も進歩するであろう循環器内科のカテーテル治療による低侵襲治療がどの            
    ようなかかわりを持っていくかなどの将来展望について概説する。
  

【特別講演】    
「輸血製剤による血栓出血症治療の現状と抗体薬などの導入による変化」      
               日本赤十字社近畿ブロック血液センター 所長 藤村 吉博

     血栓・出血症は幅広く先天性と後天性要因からなる。本講演では特に血友病A            
    と、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)並びに溶血性尿毒症症候群(HUS)の3疾            
    患を中心に、従来の血漿と新規の抗体薬による治療について述べ、最後に止血剤            
    のクリオ沈殿中に含まれる高分子量von Willebrand 因子(VWF)と、その切断            
    酵素であるADAMTS13の均衡の上に成り立つ血管新生調節の新規作用について            
    紹介する。            
     まず血友病Aは、従来、血漿由来や遺伝子発現のVIII因子製剤で治療されてき            
    たが、近年、凝固IXa因子とX因子を認識し、これを結合させるバイスペシフィッ            
    ク抗体が本邦で開発され、血友病A治療にはコペルニクス的変化が起こった。            
     次に、平成29年3月末の日付で、厚労省より新鮮凍結血漿(FFP)の改定指針が            
    発表された。これにて、FFPの適正使用が、(1)(複合型)凝固因子の補充、             
    (2)TTP及びHUSに対する血漿因子補充、の二つに集約された。前者には大量輸            
    血時に起こる希釈性凝固障害に対して、術早期から赤血球製剤に血漿や血小板を            
    一定比率加えて行うMassive Transfusion Protocol(MTP)の概念が取り入れ            
    られている。また後者のTTP/HUSについては、過去20年間で各々の病態解析に            
    ブレークスルーがもたらされた。即ち、TTPはADAMTS13の活性欠損によって            
    VWF依存症の過剰血小板凝集/血栓が起こること、また非典型(a)HUSは、志賀            
    毒素関連の典型HUSとは違って、補体第二経路の関連因子の分子異常に基づい            
    て、血管内皮障害に由来する血栓症が生じることが示された。これにて、            
    TTP/aHUS治療は単なる血漿療法のみならず、各々に抗体を中心とした分子標的            
    療法が導入され、その様が一変した。            
     一方、近年、大量出血を伴う外科手術時にはフィブリノゲン製剤やクリオ沈殿             
    の有効性が注目されている。クリオ沈殿はフィブリノゲン代替物として紹介され            
    る場合が多いが、両製剤は多くの点で異なる。特に、クリオ沈殿中に含まれる高            
    分子量VWFはADAMTS13と均衡を保つ形で、「止血」のみならず、「炎症」、            
    そして「血管新生」に大きく関与することが最近明らかにされた。この知見は大            
    動脈弁閉鎖不全症に伴うHeyde症候群の大腸に見られる異所性血管叢            
    (angiodysplasia)の形成を説明する上で注目されている。